まだまだノーベル賞受賞の盛り上がりが覚めない大学界隈です。
ニュースなどでも本庶先生の研究を取り上げて説明されていますが、
ぼくも大学で研究支援に携わっているので、ここでは、大学発の科学技術解説シリーズとして、今回は本庶先生のノーベル賞受賞の要員となった「PD-1」の研究について、誰よりもわかりやすく解説してみたいと思います!
免疫とは
まず、PD-1を理解するためには、「免疫」について知っておく必要があります。
人間には、ウイルスや細菌など外から悪いものが体内に入ってきた時、悪いもの(異物)を攻撃して自分の体を守る抵抗力が備わっています。これを「免疫」といいます。
白血球などが免疫組織の代表例です。
免疫は、攻撃する時と、何もしない時があります。
もちろん、外から異物が入ってきた時には、自分の体を守るため攻撃します。
逆に、異物がないときは、自分の体内組織を攻撃するわけにはいかないので、何もしません。
免疫は、アクセルとブレーキをうまく作用させています。
免疫療法のしくみ
免疫の活動が弱くなり、攻撃力が下がると病気になります。
風邪をひいたりするのは免疫力が下がったからとよく言われますよね。
病気になると、この免疫が元気がない状態になってしまいます。
そこで、最近の医療では、「免疫療法」と言われる治療があります。
(厳密にはもっと前からありましたが、効果が認められ始めたのが最近)
免疫の本来持っている攻撃力を復活させて、異物を攻撃してもらおうという治療です。
この免疫療法が「がんの治療に効く」ことを発見したのが、今回ノーベル賞受賞の本庶先生です。
がんを発症していることは、つまり免疫力が弱まっているか、がん細胞の厄介な力で、がん細胞自体が免疫に「悪いもの」として排除されないように、免疫の「ブレーキ」をコントロールしてしまっている状態にあります。
従来は、がん細胞をやっつけるため、免疫の攻撃力だけを強める治療ばかりが行われていました。しかし、いくら攻撃力を強めたとしても、がん細胞自らブレーキをコントロールしている状態にあっては、がん細胞をうまく攻撃できない状態でした。
ブレーキをコントロール!?
本庶先生は、発想の転換で、「ブレーキをコントロールする治療」を研究されました。
そこで発見されたのが、「PD-1」という免疫ブレーキです。
PD-1は、免疫のブレーキとして機能します。
つまり、がん細胞が免疫のPD-1をコントロール(結合と言います)してしまうのを防ぐことができれば、がん細胞を再び「悪いもの」と認識し、免疫が攻撃することでがん細胞を破壊することができることを証明されました。
この研究成果をもとにして作られた薬として、製薬企業の小野薬品工業から、「オプジーボ(ニボルマブ)」が販売されています。胃がんや肺がんへの治療に役立てられています。
いかがでしたか。
今話題の「PD-1」について、誰でも簡単にわかる解説をしてみました!
この免疫というものは本当に奥が深いです。
もっと知りたい方は、本庶先生の本を読んでみられてはどうでしょうか。
以下はぼくのオススメです。読みやすいです。
なお、この記事は簡単な表現を最優先にしています。多少要約している個所もありますが御容赦ください…
今後は、医療系を中心に、大学で生まれた新しい科学技術について、解説シリーズをしたいと思います。ぜひご覧ください。
※挿絵は国立がん研究センターHPより