「入試改革」
これまで一度は聞いたことのある言葉だと思います。
大学入学者の選抜のため、いかに効率よく良い学生を選抜できるか、これまで様々な入試改革が進められてきました。
日本の大学入学試験は大きく3つあります。
①一般入試 ②推薦入試 ③AO入試(Admission Office)です。
①一般入試は、これまで最も多く最も古くから行われてきた試験で、一般的にペーパーテストを受験し、合否が決められるものです。
②推薦入試は、大学が指定した高校から推薦された生徒を選抜する(あるいは自分を推薦するという形で推薦枠がない高校を対象とする場合もある)ものです。
③AO入試は、1990年に慶應大学が初めて導入したもので、小論文や面接で能力を評価します。
このうち、推薦入試やAO入試では、受験生は課外活動や英検などの資格が評価され、努力次第で一般入試では到底手の届かない大学にも合格できるとあって、受験生に非常に人気があります。
ただ、AO入試等での合格者が増えた結果、学生に「学力格差」が生じ、大きな混乱が生じているのはご存知でしょうか?
つまり、「授業についていけない学生」が多く生み出されてしまったのです。
大学改革、特に「入試改革」は、このような大学教育のあり方をガラリと変えてしまうことがあります。
この記事では、AO入試改革を例に、大学での「学生と学力」の課題について探っていきたいと思います。
AO入試が生み出した「格差」
入試改革により、従来型のペーパー試験だけではなく、「面接」や「部活の成績」などこれまでの頑張りや人柄を重視しようというAO入試は、良い評価方法だと思います。
むしろこれからの時代には、学力だけでなく「プレゼンテーション」や「会話力」など対人能力が評価される時代になってきています。
ただ、受験生から見れば、一般入試よりハードルの低いAO入試となったのは間違いありません。
実際に、平成29年度大学入学者の44%が「AO・推薦」試験受験者であり、私立大学に至っては2人に1人が「AO・推薦」です。(旺文社HPより)
本学では、特に外国語を担当する教員から
「一般入試で入ってきた学生とAOや推薦で入ってきた学生の学力差が大きく、授業が進めにくい」と言った話が何度かあったとのこと。
こうした要因もあり、英語(外国語)授業は、クラス分けを行い、中学〜高校の基礎英語から復習している状況だということです。
大学生に、中学生英語を教える大学教員・・・
大学職員としては色々考えさせられます。
英語に限った話ではありません。
本来、大学では専門教育を教えたり、学生自ら研究して考える場である必要がありますが、そもそも学生自身の「勉強の体力」が落ちているため、「大学の授業についていけない」学生が増えています。
文部科学省が平成26年に行った調査では、1年間に7万9,311人と全体の約3%の学生が大学を中退しています。
平成27年に労働政策研究・研修機構が行なった「大学等中退者の就労と意識に関する研究」では、ハローワークを訪問した大学中退者に「大学を辞めた理由」をアンケートしたところ、なんと「学業不振」と答えた元学生が49%だったということですから驚きです。。。
大学が向かう方向性 「学生と学力」のバランス
正直、明確な答えはありません。
また、経営やブランドなど大学によっても大きく異なるため様々な検討が必要です。
ただ言えることは、「学生を確保したい」とは言え、これ以上「学業不振」が理由で退学する学生を増やしてはならないと思います。
そのため、様々な大学がこの現状を見直すべく、「入学前支援」を行うなどの例が出てきています。
「信州大学」
入学前に工業高校出身者に対して無料で、高校の数学と物理の補習授業を実施。
「聖学院大学」
11日間にわたり英語・数学・国語を中学レベルから教え直す講習を実施。
「早稲田大学」
推薦やAO合格者を対象に、オンラインでの講座を有料提供。
難しい問題ですが、大学職員に転職を考えておられる方にも、ご自身が大学を運営するならこの問題にどう立ち向かうのかを考えて頂ければ嬉しいです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!