【完全版】産学連携の仕事の全て。民間経験を活かして企業と大学を橋渡し

30歳で私大職員に転職した@kenseeです。

このブログでは、私大職員への転職を考えている方に向けた「転職のノウハウ」や「転職までの準備」などについて、ぼくの実体験をありのままに書いています。

このブログを始めたのは、大学職員への転職情報が全然ない中でもぼくと同じように大学職員への転職に挑戦される方への情報提供やサポートができればと考えたからです。

これまでたくさんの方からサポートの依頼やご相談をいただきましたが、

「社会人経験を活かして『産学連携』の仕事を大学職員としてサポートしたいが、産学連携の具体的な仕事内容がよくわからない」

といった質問を何名かの方から頂きましたので、このブログにも何度か出てきますが実際にぼくが担当している業務でもある「産学連携の仕事」についてこの記事ではその全てを書きました。

まず、「産学連携」とはわかりやすく言うと大学と産業(企業)の協力や連携のことです。

  ▶︎産学連携のキホンを3分で解説

企業とのお見合い?産学連携が3分でわかる!

 

なぜ産学連携が必要になるかというと、大きく2つの理由があります。

1つは、大学(特に私立大)は学生からの学費収入に依存しています。その現状を打破するため、第二、第三としての収益源として企業からの研究費収入を得たい考えです。

2つ目は、研究成果の社会還元です。大学の研究を社会のため、国民のために世に出していくために、企業と組んで産業応用を加速したいという考えです。

この産学連携は、プレイヤーとして「企業」がたくさん出てきます。

そのため「産学連携」は、企業の経験者や中途採用の即戦力にやってもらいたい仕事が多く、また選考を受ける側も、企業での経験をPRしやすいので「大学職員のやりたい仕事」でキャリア形成などと並んで人気のテーマです。

ただ「産学連携+大学名」などで検索しても、なかなか詳細の業務内容まで出てきません。つまり大学は公表していません。

なぜかというと、産学連携は企業と大学で「オーダーメイド」で作っていくスキームになっています。

企業が何を求めているのか、大学のリソースをどう提供できるのか、あるいは両者で何かを作っていくのか、企業毎にミッションやタスクはそれぞれです。

この記事では、

✅ 産学連携の仕事・業務内容を簡単に解説
✅ 産学連携に大学職員がどう関わるのか
✅ 産学連携にはどのような能力が必要か
✅ 産学連携の成功事例
 

について解説しています。

この記事を読んで、「産学連携」に関する知識とイメージをつけてもらえるとありがたいです!

さて、前置きが長くなりましたが、スタートです。

 

 

産学連携の仕事・業務内容


産学連携の主な仕事内容は以下のような感じです。

▶︎技術面の支援
・受託、共同研究、学術指導の受入
・公的研究費の申請サポートや管理
・研究成果発表会などの企画
・研究施設や機器の管理
・寄付講座等の教育プロジェクトの受入

▶︎起業の支援
・大学発/学生発ベンチャーの起業支援
・人脈やネットワークのお手伝い
・起業関係の助成金サポート

▶︎地域との連携
・実証実験での住民や自治体との連携支援
・オープンイベントの開催

▶︎知財の支援
・知的財産の創出支援、相談の受付
・知的財産の管理や維持、使用の相談
・特許の分析
・知財の社会還元、技術移転

このように技術面のサポートから知財戦略に至るまでかなり幅広いのがわかっていただけたかと思います。

ここまでは、各大学のホームページにも「産学連携部」などの機能として書かれているところもありますが、大学職員を目指す人にとって知りたいのはそこから先の「どのような業務内容か?」が知りたいところです。

そこで、ぼくの実際の業務をフロー図にしてみました。

このうち、がぼく(事務職員)、オレンジURAです。厳密に分けられない仕事も多々ありますが、二分割するとこんな感じの分担です。

では、少し具体的な業務を書いてみます。

① 研究者(教員)の技術や研究に興味を持った企業や団体から「一緒に研究したい」と大学の窓口に連絡がある【担当:事務職員

② まずは教員に相談する【担当:事務職員URA

③ 教員が前向きであれば、企業と教員の面談をセットする【担当:URA

④ 当日、企業と教員の面談をコーディネートする【担当:URA

⑤ 今後どのように進めていくべきかを教員と相談する【担当:URA事務職員

⑥ 内部で情報共有・報告を行う【担当:URA

⑦(成約する場合)企業側に契約スキームや金額を提示する【担当:事務職員

⑧ 企業と契約面での調整を図り、研究申請書の提出を支援する【担当:事務職員URA)】

⑨ 内部で決裁(稟議)を通す/審査の準備をする【担当:事務職員

⑩ 企業と契約締結の事務を進める【担当:事務職員

⑪ 研究が開始され、事業の進捗管理や調整を行う【担当:URA

⑫ 研究成果の完了報告を行う【担当:URA

⑬ 研究成果の事業化に向けた調整やサポートを行う【担当:URA事務職員

⑭ 知財や特許に関するサポートを行う【担当:事務職員(専門職)

ざっくり書いてみましたが、「URAでないとできない仕事」「事務職員でないと出来ない仕事」「両者が連携しないとできない仕事」の3つのカテゴリーがなんとなく分かっていただけるかと思います。

もちろん、全てがこの通りに進むことはまずないですが、オーソドックスなパターンとして見ていただければ。

 

産学連携への大学職員の関わり方・必要な能力


こちらの記事でも書きましたが、産学連携においては、URAがいる中で大学職員の仕事って何?と思われる方も多いかもしれません。

大学職員に求められる”調整力”とは?民間企業の調整とは一味違うってホント?

でも実は、上述のとおりで、「URAでないとできない仕事」「事務職員でないと出来ない仕事」があり、事務職員とURAは言うなれば「車の両輪」でどちらかがいなければ成り立ちません

やはり両者は連携して仕事をするので、「調整能力」であったり「コミュニケーション能力」はがっつり必要です。

(まれに)コミュニケーション能力がない教員とこのような調整をする必要があります。

この場合はとても苦労しますし、何より相談相手の企業にもとても気を遣いますね…

 

産学連携の成功事例


産学連携の成功例はたくさんありますが、「大学職員がしっかり関与して成し遂げた」成功事例をいくつかご紹介します。

経済産業省大学連携推進室が作成した「組織」対「組織」の本格的な産学連携構築プロセス事例集がとてもまとまっていてわかりやすいので、一度読んで頂くと理解が深まると思います!2019年7月に出たばかりです。

事例の多くは国立系なので、あまり参考にならないかな?と思いきや、将来の私大のモデルになるような産学連携の事例もたくさん掲載されているので、「こんな産学連携を目指すべき」という面接ネタにも使えそうです。

以下は上記事例集からいくつかポイントを抜粋してみました。

 

▶︎ポイント①「産学連携推進の鍵は人材確保と課題の設定」

筑波大学×トヨタの事例から。

筑波大学は、企業時代にチャネルを持っている人材が大学の産学連携事業には必要であると考え、2年前より「産官学共創プロデューサー」というポストを設置して、人材を集めようとしている。企業に評価されるような、企業とのネットワークを持った人に産学連携に取り組んでもらうのが理想だが、そういう人材を企業が手放すのか、また大学の給与体系が企業に較べて低いためそういった優秀な人材を引き付けることができるのか、といった課題がある。筑波大学では限界はあるものの、現状より1,2段階上の額を給与として支払う準備があるという。

筑波大学の全研究者のうち、10%程度が産学連携に関与している。参加研究者を増やすためには、研究テーマの細分化を改め、大型プロジェクトの導入によって分野横断的に教員が参画できる環境が必要であると考えている。社会工学系教員ほか、医学系やサイバニクス研究センター、芸術系、数理物質系などの教員らと共同研究をすることにより、教員参画の門戸を拡大し、学際性豊かな筑波大学ならではの融合研究を探索している。

(大学職員の立場から)

・もちろん大学職員にも企業チャネルを持っている人は重宝される
・企業は「相談しやすい大学職員」を求めている
・分野横断的なPJを企画するのは大学職員なので、技術の話もある程度知っておく必要がある

 

▶︎ポイント②「大学と企業が顔の見える関係を構築する」

順天堂大学×花王の事例から。

順天堂大学と花王は、優れた人材をどう見つけるかが最も重要な課題であると認識している。例えば、研究者のプロファイルのリストを整備するだけでは何も分からないので、やはり相手の「顔」、すなわち専門性や人間性等がわからないと連携の可能性は判断できないと考えている。そこで順天堂大学では、相談したい学内の研究者等がいれば、随時大学に相談できる環境を整えている。大学内には、当該連携の担当部門として「臨床研究支援センター」(病院)、ならびに「革新的研究推進センター」(大学)が設置され、専属のスタッフが知財関連業務を扱っている大学の研究者が知財関連で疑問を感じたら迅速に相談できる体制になっている。短期的な成果を求めがちにならないよう、特許の取得自体は目標には掲げず、実際の活用に結びつくよう、ライセンス料の配分比率等の知財の取り扱いについては適宜相談して決めているとのことである。

(大学職員の立場から)

・知財やマーケティングなどより専門的な相談や対応ができる職員は重宝される
・現場で一番難しいのは研究者のシーズを集約することだと思います・・・

 

▶︎ポイント③「産学連携本部の組織のあり方」

福井大学×日華化学の事例から。

包括的連携協定や上述の共同研究に向けて話し合いを進めるにあたっては、これまで日華化学と付き合いのあった、同社の専門分野に近い研究者に限らず、幅広い研究者に声がけし、話し合いに参加してもらうことが必要であった。そして、福井大学でそれが可能であったのは、同大の産学官連携本部の組織のあり方が関係している。すなわち、同大では産学官連携に限らず研究全般を取り扱う研究推進課の職員が、URA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)的機能を担う意味で産学官連携本部への兼務となっている。ここで、科研費などの基礎研究、省庁からの受託研究、企業との共同研究、本学教員がもつ知的財産等までを網羅した研究戦略支援データベースを構築し、産学官連携本部関係の教職員が利用できる仕組としている。このことにより、適切な研究者を探索し、また、企業の状況を正確に把握しつつ、声がけすることが可能になった。また、URA、知財、分析機器、産業人材育成にかかわる部署もすべて産学官連携本部内に属することも、この包括的連携に関する学内調整を円滑に行うことを可能にしている

一方、福井大学においては、具体的な共同研究に入る前の、テーマ抽出に関する議論に協力する研究者に対するインセンティブの付与が課題となっている。福井大学では技術相談や産学官連携活動に協力・貢献のあった教員に対してポイントを付与し、消耗品購入費や旅費等、研究費として還元する仕組みを構築しているが、そのための財源確保のために更なる工夫が必要な状況である。

(大学職員の立場から)

・結局は産学連携を担当する職員とURA的な機能を担うのが一番効率が良い。
・ただし、それなりの人員数とノウハウを持った人材が必要。
・産学連携に積極的な教員へのポイント還元は面白い・・・

 

いかがでしたか。

産学連携を全て書き込む!くらいで書いてみました。

長文になってしまい申し訳ありません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

【完全版】産学連携の仕事の全て。民間経験を活かして企業と大学を橋渡し」への2件のフィードバック

  1. mtmt 返信

    コメント失礼いたします。いつもブログ拝見してます。

    研究成果の事業化に向けた調整やサポートを行うというのは、職員の業務でもあるんですね。かなり専門的な知識が要求されそうなイメージがありますが、例えばどういうことをされるのですか。

    • kensee@大学職員に転職 投稿者返信

      コメントありがとうございます。ブログ拝見いただきありがとうございます!例えば産学連携などの共同研究を進めていく上で、専門的かつ技術的なところは教員やURAなどが担当しますが、契約をまとめたり、知財の話など職員が主体的に進める話もありますね。URAと大学職員は車の両輪のようです。どちらかがいなくては前に進みません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です